試験は「4月1日時点で施行されている法令」が出題範囲というのが大原則です。2026年度(令和8年度)試験は、2026年4月1日時点で施行済みの改正法が対象になります。
ここ数年、相続・不動産・家族法まわりで大きな改正が続いており、今年の試験はとくに**「改正論点の当たり年」**と言われそうです。司法書士試験・土地家屋調査士試験、それぞれに影響する改正点を整理しておきます。
司法書士試験への影響
1. 住所変更登記の義務化【2026年4月1日施行】
まさに今年施行の最重要改正です。
- 所有権の登記名義人に住所・氏名変更があった日から2年以内に変更登記を申請する義務
- 正当な理由なく怠ると5万円以下の過料
- 施行日(2026年4月1日)前に変更があった場合も、施行日から2年以内の申請義務あり
注意点
- 相続登記義務化(2024年4月1日施行、3年以内・10万円以下の過料)と期間・過料額が違うので混同しないこと
- 法人の代表者や本店所在地の変更とは別論点
- 職権による変更登記の制度(検索用情報の申出)も併せて導入される
記述式(不動産登記)で、住所変更登記の前提を問う問題が狙われやすい論点になります。
2. 家族法改正(共同親権等)【2026年施行】
改正民法(令和6年法律第33号)が2026年中に施行予定です。施行日が4月1日より後になる部分は2026年度試験の範囲外ですが、施行されている部分は出題範囲になるので要注意。
- 父母の離婚後の親権:単独親権だけでなく共同親権の選択が可能に
- 養育費の先取特権化
- 親以外の親族との面会交流
施行時期は条文ごとに異なるため、受験機関の最新情報を確認してください。「いつから施行か」を条文単位で押さえるのがコツです。
3. 相続登記の義務化【2024年4月1日施行・過料運用本格化】
昨年の試験でも出題済みですが、2027年3月31日が施行前相続の最終期限(施行日から3年以内)。今年は「経過措置」の角度からの出題がありえます。
- 相続開始かつ所有権取得を知った日から3年以内
- 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料
- 相続人申告登記(簡易な申出で義務を履行したとみなす制度)
記述式でも、「遺産分割未了で相続人申告登記だけ先行していた」というパターンの処理が問われえます。
4. 代表取締役住所の非表示措置【2024年10月1日施行】
商業登記法改正で、代表取締役等の住所を登記事項証明書で非表示にできる措置が始まっています。
- 申出により、住所のうち市区町村までを公開、それ以降を非表示に
- 登記申請時に申出書を添付
記述式(商業登記)で、添付書面の要否を問う問題が作りやすい論点です。
5. 民法改正(所有者不明土地関連)【2023年4月1日施行・定着期】
既に施行から3年経ち、記述式・択一式ともに本格出題フェーズに入っています。
- 相隣関係の見直し:隣地使用権、ライフライン設備設置権、越境した竹木の枝の切除
- 共有制度の見直し:所在等不明共有者持分の取得、変更・管理の多数決要件緩和
- 所有者不明土地・建物管理制度、管理不全土地・建物管理制度
- 相続財産管理制度の一元化
とくに共有物の変更・管理・保存行為の区別は、条文を何度も読み直しておきたいところです。
6. 相続土地国庫帰属制度【2023年4月27日施行】
- 相続で取得した土地のみ対象(建物は不可)
- 法務大臣への承認申請、負担金の納付
- 却下事由・不承認事由を条文レベルで整理
司法書士業務としても依頼が増えている分野で、択一の条文問題が来やすい論点です。
7. その他の要注意改正
- 嫡出推定制度の見直し(2024年4月1日施行):再婚禁止期間の廃止、嫡出否認権者の拡大
- 性同一性障害特例法の改正動向
- 民事執行・民事訴訟のIT化関連(オンライン申立て等)
土地家屋調査士試験への影響
調査士試験は不動産登記法(表示登記)と民法が中心で、不動産登記法の改正は司法書士ほど多くないのですが、2026年は民法系の改正がそこそこ効いてきます。
1. 相隣関係の改正【2023年4月1日施行】
調査士業務に直撃する改正です。択一でもほぼ毎年問われる定着論点になりました。
- 隣地使用権(民法209条):境界標の調査・設置や越境物の除去のために隣地を使用できる要件が明文化
- ライフライン設備設置権(民法213条の2、213条の3):他人の土地を通さなければ設備を設置・使用できない場合の規律
- 越境した竹木の枝の切除(民法233条):一定要件下で自ら切除可能に
試験対策のポイント
- 「通知義務の有無」「事前通知か事後通知か」「緊急時の例外」を整理
- 筆界確認業務の現場感覚と条文の要件が直結する論点なので、記述で背景を問う出題もありえます
2. 住所変更登記の義務化【2026年4月1日施行】
司法書士試験と同様に、調査士試験でも民法・不動産登記法の横断問題として出題されます。
- 表題部所有者も対象になるのか、所有権の登記名義人に限られるのか
- 表題登記・分筆登記等の前提として住所変更登記が必要になるケース
記述式で「所有権登記名義人の住所が古い住民票と一致しない」設定が来ると、前提処理を落とすリスクがあります。
3. 所有者不明土地・建物管理制度【2023年4月1日施行】
- 所有者不明土地・建物管理命令(民法264条の2〜264条の8)
- 管理不全土地・建物管理命令(民法264条の9〜264条の14)
調査士が境界確定・筆界特定の現場で所有者不明地に遭遇するケースは多く、誰が立会いの相手方になるかという実務論点が択一で狙われます。
4. 相続土地国庫帰属制度【2023年4月27日施行】
直接の出題頻度は高くないですが、土地の物理的要件(境界が明らかであること、通常の管理・処分を阻害する有体物がないこと等)は調査士業務と親和性が高く、背景知識として押さえておくと損はしません。
5. 共有制度の改正【2023年4月1日施行】
- 共有物の変更・管理・保存行為の区別
- 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡
分筆登記・合筆登記の申請人適格と絡めた出題が想定されます。共有地を分筆する場合の全員同意要件など、従来の整理と条文ベースの整理をすり合わせておきましょう。
6. 不動産登記法(表示登記)の実務運用見直し
大改正はないものの、登記官の審査・職権処理まわりで運用の見直しが続いています。
- 所有不動産記録証明制度(2026年2月1日施行):自己の所有不動産の一覧を法務局に請求できる制度
- 表題登記未了建物の職権登記の動き
「所有不動産記録証明制度」はまさに今年の新規論点。調査士試験でも一肢程度は出題される可能性があります。
試験対策としての向き合い方
改正論点の勉強は「深く狭く」でよい
改正法は条文自体が新しいので、条文をそのまま読み込むのが最短ルートです。判例・通説の蓄積がまだ薄いため、条文の要件・効果を正確に押さえるだけで択一の正答率は上がります。
過料・期間の数字は表で整理
- 相続登記:3年以内・10万円以下
- 住所変更登記:2年以内・5万円以下
- 遺産分割10年ルール(民法904条の3):相続開始から10年
数字を混同する失点がもっとももったいないので、自作の早見表を作るのがおすすめです。
施行日カレンダーを自分で作る
2026年試験は「施行日が論点を分ける」タイプの試験になります。条文ごとに施行日が違うので、**4月1日基準で「これは試験範囲か否か」**を自分で線引きできるようにしておきましょう。
おわりに
改正論点は「出題者が作りやすい」ため、例年以上に配点比重が上がる傾向にあります。本試験までの残り時間、既習範囲の総復習7:改正論点のピンポイント強化3くらいのバランスが個人的にはちょうどよいと感じています。
お互い頑張りましょう。
※ 本記事は2026年4月19日時点の情報で執筆しています。施行日や制度の詳細は法務省・法務局の公式発表を必ずご確認ください。