(土地家屋調査士試験ブレーンによる試案)
はじめに(免責)
本記事は執筆時点での情報に基づく学習用の一問一答です。条文番号・先例は発出時点のものであり、最新の法令改正・通達については一次資料(e-Gov法令検索・法務省通達等)でご確認ください。なお、個別の事案については事実関係により結論が異なり得ますので、本記事を具体的判断の根拠とすることはお避けください。
第1問(不動産登記法・表示/建物の合体による登記)
問: 所有権登記のある甲建物(所有者A)と所有権登記のない乙建物(所有者B)が合体して1個の建物となった。この場合、申請すべき登記の種類・申請義務者・申請期限・単独申請の可否を答えよ。
答: 「建物の合体による登記等」(合体後の建物の表題登記および合体前の登記のある建物についての表題登記の抹消等)を申請する。申請義務者はA・B各自(不動産登記法49条1項)、申請期限は合体の日から1か月以内(同項)。なお、1人からの申請で全員のためにされたものとみなされるため、A単独またはB単独での申請も可能(同条2項参照)。
解説: 不動産登記法49条1項は「2以上の建物が合体して1個の建物となった場合」における合体による登記等を規定し、合体前の各建物の登記状態の組み合わせ(各号)に応じて申請義務者を定める。本問は「所有権登記あり+登記なし」の組み合わせ。表示に関する登記であるため、権利登記の共同申請主義(同法60条)は適用されず、申請義務者は各自独立に申請義務を負うが、49条2項により1人からの申請で全員分の義務を履行したものとみなされる——この点が「共同申請必須」と混同されやすい頻出ポイント。持分は合体前の各建物の価格の割合によるのが原則(同条4項)。
第2問(土地家屋調査士法・業務を行い得ない事件)
問: 土地家屋調査士が相手方の依頼を受けて既に業務を行った事件について、後に従前の相手方(=現在の依頼者から見た相手方)から同一事件の依頼を受けた場合、依頼者双方の同意があれば受任できるか。
答: 受任できない。土地家屋調査士法22条の2は、業務を行い得ない事件を類型化しており、相手方から既に業務を受任した同一事件の当事者入れ替え受任は、依頼者の同意があっても許されない類型に該当する。
解説: 土地家屋調査士法22条の2は、弁護士法25条と類似の構造で、業務を行い得ない事件を列挙する。公務員として職務上取り扱った事件、仲裁手続において仲裁人として取り扱った事件、相手方の協議を受けて賛助し又はその依頼を承諾した事件などがあり、制度への信頼を根本から損なう類型については依頼者の同意による解除を認めない。弁護士法25条と比較学習することで記憶が定着しやすい。
第3問(民法・相隣関係/令和3年改正による枝の切除)
問: 隣地の竹木の枝が境界線を越えている場合、土地所有者が自ら当該枝を切除できるのは、どのような場合か。令和3年改正民法233条に基づき、3つの要件を挙げよ。
答: ①竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき、②竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるとき(民法233条3項各号)。
解説: 令和3年民法改正(令和5年4月1日施行)により、従来は越境した枝について竹木所有者への切除請求権のみが認められていたが(改正前民法233条1項)、新法233条3項で土地所有者による自力切除が一定要件下で許容されることとなった。根については従来どおり無条件で切除可能(同条4項)。竹木が共有の場合は各共有者が枝を切除できる(同条2項)——共有物の変更に該当せず各共有者単独で可能とした点が大改正ポイント。「相当の期間」は一般に2週間程度が目安とされるが、緊急性・季節性により変動。
第4問(測量計算・座標法による面積計算)
問: 次の座標値をもつ三角形ABCの土地の面積を座標法により求めよ($X$・$Y$の単位はメートル)。小数第3位を四捨五入して小数第2位まで答えよ。
- A $(X=100.00,\ Y=100.00)$
- B $(X=150.00,\ Y=120.00)$
- C $(X=130.00,\ Y=180.00)$
答: $S = 1{,}700.00\ \mathrm{m}^2$
解説: 座標法(倍面積法)による。各点について $X_i \cdot (Y_{i+1} - Y_{i-1})$ の総和の絶対値の $\frac{1}{2}$ が面積。
$$S = \frac{1}{2}\left| \sum_{i} X_i (Y_{i+1} - Y_{i-1}) \right|$$
各項の計算:
$$X_A(Y_B - Y_C) = 100.00 \times (120.00 - 180.00) = -6{,}000.00$$
$$X_B(Y_C - Y_A) = 150.00 \times (180.00 - 100.00) = +12{,}000.00$$
$$X_C(Y_A - Y_B) = 130.00 \times (100.00 - 120.00) = -2{,}600.00$$
総和:$-6{,}000.00 + 12{,}000.00 - 2{,}600.00 = 3{,}400.00$
したがって $S = |3{,}400.00| \div 2 = 1{,}700.00\ \mathrm{m}^2$
検算(ヘロンの公式): $AB = \sqrt{50^2 + 20^2} \approx 53.852$、$BC = \sqrt{20^2 + 60^2} \approx 63.246$、$CA = \sqrt{30^2 + 80^2} \approx 85.440$。$s \approx 101.269$ とすると $S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \approx 1{,}700.04\ \mathrm{m}^2$。座標法の結果と整合。
第5問(作図・書式/地積測量図の記載事項)
問: 現行の不動産登記規則の下で作成される地積測量図に必ず記載すべき事項を5つ挙げよ。
答: ①地番区域の名称、②方位、③縮尺、④地番(隣接地の地番を含む)、⑤地積及びその求積方法、⑥筆界点間の距離、⑦国土調査法施行令第2条第1項第1号に規定する平面直角座標系の番号又は記号、⑧基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値、⑨境界標があるときはその種類、⑩測量の年月日——のうち5つ(不動産登記規則77条1項各号)。
解説: 不動産登記規則77条1項は地積測量図の記載事項を列挙し、平成17年改正以降、世界測地系(平面直角座標系)による筆界点座標値の記載が原則義務化された。ただし近傍に基本三角点等がない場合の例外規定あり。縮尺は原則250分の1だが、土地の状況により250分の1を超える縮尺によることも可(不動産登記規則77条)。「作成年月日」ではなく「測量の年月日」である点に注意——作成日と測量日は区別される。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 中心論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示) | 建物の合体による登記・単独申請の可否(不登法49条) |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 業務を行い得ない事件(調査士法22条の2) |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 令和3年改正・越境枝の自力切除要件(民法233条3項) |
| 第4問 | 測量計算 | 座標法による三角形面積計算 |
| 第5問 | 作図・書式 | 地積測量図の記載事項(不動産登記規則77条1項) |