第1問 不動産登記法(表示)— 合筆の登記の制限

問: 所有権の登記名義人が同一であるA土地・B土地について、A土地のみを承役地とする地役権設定登記(A土地・B土地の関係ではなく、第三者所有地を要役地とするもの)が存する。A土地とB土地を合筆する登記の申請は受理されるか。

答: 原則として合筆登記の申請は受理されない(不動産登記法41条各号)。ただし、合筆後の土地の一部のみを承役地とする地役権の登記として存続させることを前提に、不動産登記規則105条所定の地役権図面等により承役地の範囲を特定して合筆する例外的取扱いが認められている。

解説: 不動産登記法41条は合筆制限事由を列挙する基本条文である。

  • 1号:相互に接続しない土地
  • 2号:地目又は字が相互に異なる土地
  • 3号:表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる土地
  • 4号:表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする土地
  • 5号:所有権の登記がある土地と所有権の登記がない土地
  • 6号:所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地(合筆をすることができる権利に関する登記がある土地として法務省令で定めるものを除く)

 ここで重要なのは、地役権については「合筆後の土地の一部について存続する旨」を地役権図面(不動産登記規則79条)で特定して合筆できる例外があることである(不動産登記法41条6号括弧書、不動産登記規則105条)。  不動産登記規則105条は次の3類型を例外として定める:

  • 1号:承役地についてする地役権の登記
  • 2号:担保権の登記であって、登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一のもの
  • 3号:信託の登記であって、信託目録に記載すべき情報の内容が同一のもの

 誤肢として「地役権の登記があれば一切合筆できない」とするものは規則105条の例外を見落としたもの、「地目が異なっても所有権の登記名義人が同一であれば合筆できる」とするものは41条2号の独立要件を見落としたもの。中級者は、合筆制限事由(41条各号)と例外(規則105条1号〜3号)を一体で押さえる。

第2問 土地家屋調査士法 — 業務を行い得ない事件

問: 土地家屋調査士Aは、過去に乙から境界に関する相談を受け、相談料を受領していた。その後、乙の相手方である甲から、当該境界に関連する筆界特定の手続代理関係業務を依頼された。Aは当該事件を受任することができるか。

答: 受任することができない(土地家屋調査士法22条の2第2項第1号)。土地家屋調査士は、筆界特定の手続代理関係業務又は民間紛争解決手続代理関係業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件については、筆界特定の手続代理関係業務を行ってはならない。

解説: 調査士法22条の2は、調査士が業務を行い得ない事件を列挙する規定で、中級以上の頻出論点である。条文構造の理解が肝要である。  第1項は、公務員として職務上取り扱った事件、仲裁人として取り扱った事件についての一般的業務禁止を定める。  第2項は、筆界特定の手続代理関係業務に関する制限を定め、各号で次の事件について業務禁止を規定する:

  • 第1号:相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
  • 第2号:相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
  • その他、調査士法人の社員又は使用人として関与した事件等の制限

 依頼者の同意があれば受任できる類型は別途定められており、絶対的制限と相対的制限の区別を押さえる必要がある。  関連論点:①筆界特定の手続代理権の範囲(調査士法3条1項6号)、②懲戒事由(調査士法42条以下)と業務制限違反の関係。  誤肢として「相談料を受領していなければ受任できる」とするものは、「相手方の協議を受けて賛助し」の文言(協議を受けて何らかのアドバイスをした事実そのものを問題にする)の射程を見落としたもの。条文の項・号を取り違えやすい論点であり、本試験対策上は条文の構造から押さえることが必要である。

第3問 民法相隣関係 — 改正民法209条(隣地使用権)

問: Aは、自己所有地の境界付近に建物を新築するため、隣地(B所有)に立ち入って境界調査・測量を行う必要がある。改正民法上、Aはどのような手続で隣地を使用できるか。Bが承諾しない場合の処理を含めて答えよ。

答: 令和3年改正民法209条1項により、土地の所有者は、①境界又はその付近における障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、②境界標の調査又は境界に関する測量、③民法233条3項の規定による枝の切取りのため、必要な範囲内で隣地を使用することができる(住家への立入りは居住者の承諾が必要、同項但書)。Aはあらかじめその目的・日時・場所・方法を隣地所有者B及び隣地使用者に通知しなければならず(同条3項本文)、損害が最も少ないものを選ばなければならない(同条2項)。Bが承諾しない場合でも、必要な範囲・最小損害の態様であれば適法に立ち入ることができ、Bに損害が生じたときは償金支払義務を負う(同条4項)。

解説: 令和3年改正・令和5年4月1日施行の隣地使用権は、調査士業務に直結する超重要改正論点である。  改正前民法209条1項は「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」とし、承諾がない場合は承諾に代わる判決を得る必要があった。これが測量実務上の大きな負担となっていた。  改正民法209条の構造:

  • 1項:使用目的を3類型に拡張(境界調査・測量を明文化)。住家立入りは居住者承諾要
  • 2項:使用方法は隣地所有者・使用者のために損害が最も少ないものを選ぶ
  • 3項:あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知(事前通知主義)。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知すれば足りる(同項但書)
  • 4項:損害の償金請求権

 関連改正:①越境した枝の切取り権(民法233条3項:催告後の自己切取り)、②ライフライン設備設置・使用権(民法213条の2)も同時施行。  誤肢として「Bの承諾なく立ち入るには裁判所の許可が必要」とするものは改正前209条と取り違えたもの、「住家でも事前通知のみで立ち入れる」とするものは1項但書(住家立入には居住者の承諾要)を見落としたもの。

第4問 測量計算 — 座標法による面積計算(電卓不可)

問: 四角形ABCDの各頂点の平面直角座標が次のとおりであるとき、当該四角形の面積を求めよ(電卓不可)。

X(m) Y(m)
A 2 1
B 8 3
C 10 9
D 4 11

答: 48.00 ㎡

解説: 座標法(座標による面積計算)の倍面積公式は次のとおり。

$$2S = \left| \sum_{i=1}^{n} x_i (y_{i+1} - y_{i-1}) \right|$$

A→B→C→D の順に適用する(D の次は A、A の前は D とする)。

$$2S = | x_A(y_B - y_D) + x_B(y_C - y_A) + x_C(y_D - y_B) + x_D(y_A - y_C) |$$

各項を順に計算する:

  • $x_A(y_B - y_D) = 2 \times (3 - 11) = 2 \times (-8) = -16$
  • $x_B(y_C - y_A) = 8 \times (9 - 1) = 8 \times 8 = 64$
  • $x_C(y_D - y_B) = 10 \times (11 - 3) = 10 \times 8 = 80$
  • $x_D(y_A - y_C) = 4 \times (1 - 9) = 4 \times (-8) = -32$

合計 = $-16 + 64 + 80 - 32 = 96$

面積 $S = 96 \div 2 = 48$ ㎡

【検算】Y 軸基準の対称形公式で再計算する。

$$2S = \left| \sum_{i=1}^{n} y_i (x_{i-1} - x_{i+1}) \right|$$

  • $y_A(x_D - x_B) = 1 \times (4 - 8) = -4$
  • $y_B(x_A - x_C) = 3 \times (2 - 10) = -24$
  • $y_C(x_B - x_D) = 9 \times (8 - 4) = 36$
  • $y_D(x_C - x_A) = 11 \times (10 - 2) = 88$

合計 = $-4 - 24 + 36 + 88 = 96$ → 倍面積一致。S = 48.00 ㎡

中級者が押さえるべき論点:

  • 座標法は閉合多角形でのみ成立。頂点順序は時計回り・反時計回りいずれでも、絶対値で処理する
  • 三斜法に比べ座標法は誤差累積が小さく、現代は座標法が主流(ただし試験では両方の実績あり)
  • 不動産登記規則77条1項は地積測量図に「筆界点の座標値」記載を要求し、平面直角座標系(測量法施行令別表)に基づく座標値が原則となる

第5問 作図書式 — 地積測量図の記載事項

問: 分筆の登記の申請に伴って提出する地積測量図に記載しなければならない事項として誤っているものを、次のうちから一つ選べ。

① 地番区域の名称 ② 方位 ③ 縮尺 ④ 地番(分筆前の土地の地番)及び隣接地の地番 ⑤ 分筆前の土地の所有権の登記名義人の住所及び氏名

答: ⑤が誤り。地積測量図に登記名義人の住所・氏名を記載する規定はない。

解説: 地積測量図の記載事項は不動産登記規則77条1項各号に列挙されており、本試験書式問題で記載漏れが頻出減点対象となるため、中級者は完全に暗記する必要がある。

不動産登記規則77条1項が定める地積測量図の記載事項:

記載事項
1号 地番区域の名称
2号 方位
3号 縮尺
4号 地番(地番区域内の土地の地番)及び隣接地の地番
5号 地積及びその求積方法
6号 筆界点間の距離
7号 国土調査法施行令第2条第1項第1号に規定する平面直角座標系の番号又は記号
8号 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
9号 境界標があるときは、当該境界標の表示
10号 測量の年月日

 所有権の登記名義人の住所・氏名は記載事項として規定されていない(申請書側に記載される)。地積測量図の作成者である土地家屋調査士は職氏名・職印で表示される。  関連論点:①平成17年改正で座標値記載が必須化(旧規則の三斜求積から座標求積へ移行)、②基本三角点等に基づく測量ができない場合の取扱い、③精度区分(平成17年法務省告示第170号別表第3)。  誤肢として「方位は不要」「隣接地の地番は不要」とするものは、規則77条1項を読んでいない致命的誤り。


出題分野の振り分け

分野 主要論点 主な根拠
第1問 不動産登記法(表示) 合筆の登記の制限 不動産登記法41条、不動産登記規則105条1〜3号
第2問 土地家屋調査士法 業務を行い得ない事件 調査士法22条の2第2項1号
第3問 民法相隣関係 改正民法209条 隣地使用権 民法209条1〜4項(令和3年改正)
第4問 測量計算 座標法による面積計算 不動産登記規則77条1項7号・8号
第5問 作図書式 地積測量図の記載事項 不動産登記規則77条1項1〜10号