(司法書士試験ブレーンによる試案)

はじめに

本記事の内容は執筆時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別事情によって判断が異なる場合があります。試験対策・学習目的でご活用いただき、具体的な事案への適用は一次資料および専門家にご確認ください。


第1問:超過特別受益(民法903条)

問: 被相続人Aの相続人は子B・Cの2名(法定相続分各1/2)。Aは生前、Bに対し生計の資本として2000万円を贈与した(特別受益)。Aの相続開始時の遺産は1000万円、相続債務はない。BとCの具体的相続分はそれぞれいくらか。

答: B=0円、C=1000万円

解説: 民法903条1項により、みなし相続財産=遺産1000万円+特別受益2000万円=3000万円。法定相続分(各1/2)では各1500万円。Bの具体的相続分=1500万円-2000万円=△500万円となるが、民法903条2項は「受贈者はその相続分を受けることができない」と規定し、超過分の返還義務は生じない。よってB=0円、C=1000万円(遺産全額)。Cは本来1500万円の取り分があるが、Bへの超過特別受益により圧縮されて1000万円に留まる点が中級者の壁。


第2問:相続放棄と代襲相続(民法887条・939条)

問: Aが死亡した。相続人は子B(Bには子Dがいる)と子Cの2名。Bが家庭裁判所に相続放棄の申述をし受理された。DはAの代襲相続人となるか。

答: ならない。

解説: 代襲相続の発生原因は①相続開始以前の相続人の死亡、②欠格(民法891条)、③廃除(民法892条)に限定される(民法887条2項)。相続放棄はこれらに含まれない。また、相続放棄は相続開始時に遡って効力を生じ(民法939条)、放棄者は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われる。Bが放棄した場合、DはBの代わりにAの相続人とはならず、C単独がAの全財産を相続する。


第3問:遺留分侵害額請求(民法1042条・1046条)

問: 被相続人Xの遺産は4000万円(相続債務なし・生前贈与なし)。相続人は配偶者Yと子Zの2名のみ。Xは「遺産の全部をYに相続させる」旨の遺言を作成した。Zが遺留分侵害額請求を行使できる金額はいくらか。

答: 1000万円

解説: 遺留分算定の基礎財産=4000万円(民法1043条1項)。相続人が配偶者と子の場合、遺留分の総体的割合は1/2(民法1042条1項2号)。Zの法定相続分は1/2(民法900条1号)なので、Zの個別遺留分=4000万円×1/2×1/2=1000万円。Zの遺言による取得額は0円なので、侵害額=1000万円(民法1046条2項)。なお2019年(令和元年)7月1日施行の改正により、従来の「遺留分減殺請求(物権的効果あり:旧1031条)」から「遺留分侵害額請求(金銭債権:民法1046条)」へ転換された。遺留分権利者はもはや当然には物権の返還を求めることができず、価額弁償の金銭債権を行使する形となる点に注意。


第4問:相続登記申請義務(不動産登記法76条の2)

問: 不動産登記法76条の2に定める相続登記申請義務について、次のア〜ウのうち正しいものを選べ。

  • ア:2024年4月1日施行のため、施行前に開始した相続には申請義務が課されない。
  • イ:相続開始を知り、かつ所有権取得を知った日から2年以内に申請しなければならない。
  • ウ:正当な理由なく申請義務に違反した場合、10万円以下の過料に処される。

答: ウのみ正しい

解説:

ア:誤。施行前(2024年4月1日以前)に開始した相続にも義務は適用される。経過措置として施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に申請すれば足りる(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第6項)。

イ:誤。期限は「2年」ではなく「3年」以内(不動産登記法76条の2第1項)。「2年/3年」の混同は頻出ミス。

ウ:正。不動産登記法164条1項のとおり。


第5問:熟慮期間の起算点(民法915条・最判昭和59年4月27日)

問: Aが死亡し、Aの子BはAの死亡を2026年1月10日に知った。BはAの財産状況を一切調査せずに何も手続をしなかった。2026年6月1日、AにはBが全く知らなかった多額の借金があることが初めて判明した。Bは相続放棄できるか。

答: 原則として熟慮期間を徒過しており単純承認擬制が生じているが、判例によれば例外的に放棄が認められる余地がある。

解説: 民法915条1項の熟慮期間(3ヶ月)の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」=2026年1月10日。期間満了は同年4月10日。6月1日時点では既に徒過しており、民法921条2号により単純承認擬制が原則。しかし最判昭和59年4月27日(民集38巻6号698頁)は、「相続財産が全く存在しないと信じたため熟慮期間内に申述しなかったことにつき相当の理由があるときは、熟慮期間は相続財産の存在を認識した時から起算するのが相当」と判示した。本問では財産調査を怠ったとすれば「相当の理由」の認定は困難であり、例外扱いは通常認められにくい。ただし具体的な事情によっては認められる余地がある。


出題分野の振り分け

分野 条文・判例
第1問 民法・相続(特別受益) 民法903条1項・2項
第2問 民法・相続(相続放棄と代襲) 民法887条2項・939条
第3問 民法・相続(遺留分) 民法1042条・1043条・1046条
第4問 不動産登記法(相続登記義務化) 不登法76条の2・164条1項
第5問 民法・相続(熟慮期間) 民法915条・921条・最判昭59.4.27