(土地家屋調査士試験ブレーンによる試案)
はじめに
本記事の内容は執筆時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別事情によって判断が異なる場合があります。試験対策・学習目的でご活用いただき、具体的な事案への適用は一次資料および専門家にご確認ください。
第1問:建物滅失登記の申請義務者・申請期限(不動産登記法57条)
問: 登記されている建物の所有権登記名義人Aが死亡し、Bが単独で相続した(相続登記未了)。その後、当該建物が地震により全壊・滅失した。建物滅失登記の申請義務者と申請期限を答えよ。
答: 申請義務者はB、申請期限は滅失の日から1ヶ月以内。
解説: 不動産登記法57条は「建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない」と規定する。相続登記が未了であっても、BはAの相続によりその地位を承継しているため申請義務者となる(不動産登記法30条参照)。申請書には相続を証する情報(戸籍謄本等)を添付する。なお、正当な理由なく申請を怠った場合は10万円以下の過料(不動産登記法164条1項)。
第2問:建物表題登記未申請のまま所有者死亡(不動産登記法47条・30条)
問: Aが新築建物を取得したが、建物表題登記を申請しないまま死亡した。BがAを単独相続した。Bが当該建物の建物表題登記を申請する場合、申請情報中の「所有者」欄はどのように記載し、表題登記完了後の表題部所有者はどのように記録されるか。
答: 申請情報の所有者欄にはBを記載し相続を証する情報を添付する。登記完了後の表題部所有者は「B」と記録される(「A相続人B」とはならない)。
解説: Aが新築後登記未了で死亡した場合、建物所有権はAの死亡時にBへ承継されている(民法896条)。BはAの相続人として建物表題登記を申請できる(不動産登記法47条1項・30条)。登記完了時点での所有者はBであるため、表題部所有者はBとして記録される。なお、申請期限の起算点については一次資料での確認を推奨します。
第3問:遺産共有状態における土地分筆登記の申請適格(不動産登記法39条)
問: 土地の所有権登記名義人Aが死亡し、相続人B・Cが各1/2の法定相続分で遺産共有中(相続登記未了)。この状態でBが単独でCの同意なく当該土地の分筆登記を申請できるか。
答: できない。
解説: 不動産登記法39条1項は「土地の分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は申請することができない」と規定する。分筆登記は土地の地番・形状を変更する処分的行為であり、共有物の保存行為(民法252条5項)には当たらないため、共有者全員の合意・申請が必要となる(民法251条参照)。単独申請は認められない。実務手順は①相続登記完了(B・C各1/2名義)→②B・C全員申請で分筆登記、となる。
第4問:区分建物の表題部変更登記と相続登記の先後(不動産登記法51条・30条)
問: 区分建物(マンション)専有部分の所有権登記名義人Aが死亡し、BがAを単独相続した(相続登記未了)。Bはリノベーション工事により専有部分の床面積が増加したため、建物表題部変更登記を申請しようとしている。相続登記未了のままBは当該変更登記を申請できるか。
答: できる。
解説: 建物表題部変更登記(不動産登記法51条)は表示に関する登記であり、不動産登記法30条の規定により相続人が申請できる。相続登記(権利に関する登記)の完了は表示登記申請の前提条件とはされていない。Bは申請書に相続を証する情報を添付し、自らがAの相続人であることを明らかにして申請する。表示登記と権利登記は別系統であり、権利登記先行完了を要しない点が実務上の確認事項。なお、区分建物の専有部分の床面積変更には51条が適用され、53条(44条1項1号〜6号を除く事項を対象とする規定)は床面積(44条1項3号)には適用されない。
第5問:委任者死亡と土地家屋調査士への委任契約の帰趨(民法653条・654条)
問: 土地家屋調査士Pが依頼人Aから土地境界確定測量の委任を受けて業務遂行中に、Aが死亡した。Aの相続人はB・C(各1/2)の2名。PはB・Cの指示のもと業務を継続してよいか。また委任契約はどうなるか。
答: 委任契約はAの死亡と同時に終了する(民法653条1号)。PはB・Cに契約終了を通知し、新たに委任を受け直す必要がある。ただし急迫の事情がある場合は緊急処理義務が生じる(民法654条)。
解説: 民法653条1号「委任は委任者の死亡によって終了する」により、Pの受任契約はAの死亡と同時に失効する。新たな委任状を取得しない限り業務を継続する法的根拠がない。ただし民法654条により、急迫の事情がある場合は相続人が処理できるまで必要な措置をとる義務がある。なお、Aの生存中に完了した業務に対する報酬請求権(民法648条)は、Aの相続人B・Cに対して行使できる(民法896条による承継)。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 条文 |
|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法・表示(建物滅失) | 不登法57条・164条1項 |
| 第2問 | 不動産登記法・表示(建物表題登記) | 不登法47条1項・30条・民法896条 |
| 第3問 | 不動産登記法・表示(分筆申請適格) | 不登法39条1項・民法251条・252条5項 |
| 第4問 | 不動産登記法・表示(区分建物変更) | 不登法51条・30条・44条1項3号 |
| 第5問 | 民法・委任(委任者死亡) | 民法653条1号・654条・648条・896条 |