(司法書士試験ブレーンによる試案)
はじめに
本記事は、司法書士試験を受験される中級以上の方を対象とした一問一答形式の問題集です。各問題の解説は執筆時点の法令・判例に基づく一般論であり、個別事情によって判断が異なる場合があります。条文・判例の最終確認は一次資料(e-Gov法令検索・裁判所HP等)にて行ってください。
第1問:民法(法定追認)
問: 未成年者Aが法定代理人の同意を得ずにBとの間で売買契約を締結した後、Aが成年に達してからBに対し売買代金の支払を請求した。この場合、Aはもはや当該売買契約を取り消すことができない。
答:○
解説: 民法125条(法定追認)は、追認可能な時以後に取消権者が「履行の請求」(同条2号)をした場合、追認したものとみなすと規定する。成年に達してからの履行請求は取消原因消滅後の行為であり、法定追認が成立する。ただし、異議をとどめた上で履行請求をした場合には法定追認は成立しない(同条ただし書)。異議の留保なく請求した本問では、ただし書の適用はなく法定追認が成立する。
第2問:不動産登記法(相続登記の申請義務)
問: 令和6年4月1日の不動産登記法改正施行前に相続が開始した不動産についても、所有権を取得した相続人が正当な理由なく申請義務を怠った場合、10万円以下の過料に処せられることがある。
答:○
解説: 不動産登記法76条の2第1項により、相続による所有権取得者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権取得を知った日から3年以内に申請義務を負う。同法164条1項は正当な理由なき懈怠に10万円以下の過料を定める。施行前の相続については、令和3年法律第24号附則第5条第6項により、施行日(令和6年4月1日)から3年以内(令和9年3月31日まで)が申請期限となる遡及適用の仕組みが設けられている。
第3問:商業登記法(代表取締役の互選と添付書面)
問: 取締役会非設置の株式会社において、定款に「代表取締役は取締役の互選によって定める」旨の規定がある場合に代表取締役の変更登記を申請するとき、互選書には取締役全員の実印を押印し、各自の印鑑証明書を添付しなければならない。
答:×
解説: 商業登記規則61条6項は、取締役の互選によって代表取締役を定めた場合の添付書面の押印要件として、①取締役全員の実印を押印し各自の印鑑証明書を添付する方法、または②変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑(登記所届出印)で押印する方法(この場合は印鑑証明書不要)のいずれか一方で足りるとしている。「実印+印鑑証明書でなければならない」という限定は誤りであり、登記所届出印のみでも申請可能。
第4問:民事訴訟法(既判力の主観的範囲)
問: 確定判決の既判力は、口頭弁論終結後に当該訴訟の目的である権利を承継した者に対しても及ぶ。
答:○
解説: 民事訴訟法115条1項3号は、確定判決の効力が「前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人」にも及ぶと規定する(前二号は「当事者」および「当事者が他人のために原告・被告となった場合のその他人」)。承継人が拘束される根拠は、前主の訴訟上の地位を引き継ぐことによる法的安定性の確保である。なお、口頭弁論終結「前」の承継人については既判力は当然には拡張されず、訴訟引受け(同法50条・51条)等の制度が設けられている。
第5問:供託法(取戻しと遡及効)
問: 受領拒絶を原因とする弁済供託において、債権者が供託を受諾する前に供託者が供託物を取り戻した場合、弁済供託による債務消滅の効果は取戻し時から将来に向かって消滅する。
答:×
解説: 民法496条1項後段は「供託しなかったものとみなす」と規定しており、取戻しによる債務消滅効果の消滅は遡及的(供託時に遡って)なものとなる。「将来に向かって消滅する」とする本問は誤りである。したがって、供託期間中に弁済として有効であった期間が存在したことにはならず、当初から供託しなかったのと同様の法律関係となる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法 | 法定追認(125条) |
| 第2問 | 不動産登記法 | 相続登記申請義務の遡及適用 |
| 第3問 | 商業登記法 | 代表取締役互選と添付書面の押印方法 |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 既判力の主観的範囲(115条1項3号) |
| 第5問 | 供託法 | 弁済供託の取戻しと遡及効(496条) |