(土地家屋調査士試験ブレーンによる試案)

はじめに

本記事は土地家屋調査士試験の中級以上の受験生を対象とした一問一答です。記載の条文番号・判例・先例は執筆時点の情報に基づいており、個別の事情や解釈によって判断が異なる場合があります。学習の参考としてご活用いただき、最終確認は必ず一次資料(e-Gov法令検索・裁判所HP等)でお願いします。


第1問【不動産登記法・表示登記】分筆と地積更正の同時申請

問: 甲土地(登記地積500㎡)を乙土地(200㎡)と丙土地(300㎡)に分筆したい。ただし実測の結果、甲土地全体の実際の地積は520㎡であることが判明した。この場合、地積更正登記と分筆登記はどのような手続で申請すべきか。

答: 地積更正登記と分筆登記は一の申請情報で同時に申請することができる。ただし、分筆後各筆の地積の合計が更正後の地積(520㎡)と一致することが必要。

解説: 地積更正と分筆の同時申請は実務上認められており、先例(昭和40年5月17日民三第508号通達)もこれを明示する(通達番号は一次資料での確認を推奨)。分筆後各筆の地積の合計が更正後の地積と合致しなければ申請は受理されない。地積測量図には分筆前全体地積、分筆後各筆の地積および計算根拠を記載しなければならない(不動産登記規則77条1項)。


第2問【土地家屋調査士法】業務停止中の受任済み事件

問: 6か月の業務停止処分を受けた土地家屋調査士Aは、業務停止処分を受ける前から受任していた登記申請代理事件について、停止期間中に申請行為を行うことができるか。

答: できない。業務停止期間中は、処分前から受任していた事件であっても、一切の業務を行うことは禁止される(土地家屋調査士法42条参照)。

解説: 土地家屋調査士法42条は懲戒処分の種類(戒告・業務停止・業務禁止)を定める規定であり、業務停止処分を受けた土地家屋調査士はその期間中一切の業務を行うことができない。既受任事件についての例外規定は存在しない。司法書士法47条も同趣旨(個人の司法書士に対する懲戒処分規定)であり、業務停止は業務の全面的禁止を意味する。


第3問【民法・相隣関係】囲繞地通行権と自動車通行

問: 袋地の所有者Aは、囲繞地の所有者Bに対し、自動車での通行を可能にする幅員6メートルの通路開設を請求した。この請求は民法210条の囲繞地通行権として認められるか。

答: 必ずしも認められるとは限らない。自動車通行の必要性、周辺土地の状況、囲繞地所有者の被る損害等を総合考慮して判断される(最判平成18年3月16日民集60巻3号735頁)。6メートルという広幅員は特段の必要性の立証を要する。

解説: 民法212条は「通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」と規定する。最判平成18年3月16日民集60巻3号735頁は自動車通行の可否について「袋地所有者が自動車を通行させる必要性、周辺の土地の状況、囲繞地通行権が認められることにより囲繞地所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべき」と判示した。単純に「袋地だから自動車通行も当然認められる」とは解されず、損害最小の原則との調整が求められる。


第4問【測量計算】座標法による地積計算

問: 次の4頂点を持つ土地(A→B→C→D→A順)の地積を座標法(ガウスの公式)で求めよ。 A(0, 0)、B(10, 0)、C(10, 8)、D(0, 8)(単位:m)

答: 80.00㎡

解説(検算過程):

ガウスの公式:$2S = |\sum(X_i \cdot Y_{i+1} - X_{i+1} \cdot Y_i)|$

区間 $X_i \cdot Y_{i+1}$ $X_{i+1} \cdot Y_i$
A→B $0 \times 0 = 0$ $10 \times 0 = 0$ 0
B→C $10 \times 8 = 80$ $10 \times 0 = 0$ +80
C→D $10 \times 8 = 80$ $0 \times 8 = 0$ +80
D→A $0 \times 0 = 0$ $0 \times 8 = 0$ 0

$$2S = |0 + 80 + 80 + 0| = 160 \quad \therefore S = 80.00\text{㎡}$$

検算:長方形として $10 \times 8 = 80\text{㎡}$ → 一致。

地積の表示は平方メートルを単位とし、宅地・鉱泉地(および10㎡以下の土地)は小数点以下2位まで、それ以外で10㎡超の土地は1㎡未満切捨てとなる(不動産登記規則100条1項)。平面直角座標系ではX軸が南北方向・Y軸が東西方向であり、一般数学の直交座標系とは軸の意味が異なる点に注意すること。


第5問【作図書式】地積測量図の必要記載事項

問: 地積測量図の必要記載事項として「方位」は明示的に定められているか。また、縮尺についての規定はあるか。

答: 方位は必須記載事項である(不動産登記規則77条1項2号)。縮尺についても同条1項3号で「縮尺」が記載事項とされており、実務上は250分の1を標準とする(不動産登記規則77条参照)。

解説: 不動産登記規則77条1項各号が地積測量図の記載事項を網羅的に列挙しており、2号で「方位」、3号で「縮尺」が必須記載事項として明示されている。縮尺250分の1が標準とされるが、土地の規模・形状に応じた適切な縮尺を用いることも認められる。方位については真北を示すことが求められ、磁北と混同しないよう注意。その他の主な記載事項として、4号:地番(隣接地番含む)、5号:地積及びその求積方法、6号:筆界点間の距離、8号:筆界点の座標値(平成17年改正施行以降の申請)、10号:測量年月日も整理しておくこと。


出題分野の振り分け

分野 主要論点
第1問 不動産登記法(表示登記) 分筆・地積更正の同時申請
第2問 土地家屋調査士法 業務停止中の業務禁止
第3問 民法(相隣関係) 囲繞地通行権と自動車通行
第4問 測量計算 座標法(ガウスの公式)による地積計算
第5問 作図書式 地積測量図の必要記載事項