(土地家屋調査士試験ブレーンによる試案)
はじめに
本記事は、土地家屋調査士試験の中級以上の受験生を対象とした一問一答形式の学習コンテンツです。記載内容は執筆時点の情報に基づくものであり、個別の事情によって判断が異なる場合があります。条文番号・計算根拠は参考情報として掲載していますが、実際の学習・実務においては必ず一次資料(e-Gov法令検索等)でご確認ください。
第1問:不動産登記法(表示登記)― 合筆登記の制限
問: A所有の甲土地(乙区に抵当権の登記あり)と、B所有の乙土地(権利登記なし)について、合筆登記の申請は受理されるか。制限事由を条文に基づいて述べよ。
答: 受理されない。①所有者が異なる(不動産登記法41条3号)、②甲土地にのみ所有権以外の権利(抵当権)の登記がある(不動産登記法41条6号)という、二つの制限事由に該当するため。
解説: 不動産登記法41条の合筆制限(主要事由):
| 号 | 合筆できない場合 |
|---|---|
| 1号 | 相互に接続していない土地 |
| 2号 | 地目が異なる土地 |
| 3号 | 所有者(表題部所有者・登記名義人)が相互に異なる土地 |
| 4号 | 所有者の持分が相互に異なる土地 |
| 5号 | 所有権の登記がない土地と所有権の登記がある土地 |
| 6号 | 所有権以外の権利に関する登記がある土地(合筆後も登記できる同一担保権等を除く) |
本問は「所有者相違(3号)」かつ「甲のみに抵当権(6号)」で二重に不可。全筆に同一内容の抵当権があれば6号例外として合筆可能になる点も押さえること。
第2問:土地家屋調査士法 ― 名義貸し禁止
問: 土地家屋調査士Aは、資格を持たないBから「登記申請書類を自分で作成するので、Aの名義で申請したい」と依頼された。Aが承諾した場合に問題となる法的リスクと、想定される制裁を述べよ。
答: 名義貸しは土地家屋調査士法の禁止規定(名義使用の禁止規定)に違反する(一次資料での条文番号確認を推奨)。土地家屋調査士法42条に基づく懲戒処分(戒告・2年以内の業務停止・業務禁止)の対象となるほか、関連罰則規定による刑事責任を負う可能性がある。
解説:
⚠️ 本問は条文番号・罰則の量刑について一次資料での確認を推奨。土地家屋調査士法は令和2年8月1日に大幅改正されており、正確な条文番号は e-Gov 法令検索で確認のこと。
名義貸しが問題になる法的構造:
- 資格者が名義を貸すことで非資格者が業務を実質的に行う → 登記の信頼性を損なう
- 懲戒処分ルート(土地家屋調査士法42条):戒告・業務停止・業務禁止
- 刑事罰ルート:関連罰則規定による懲役・罰金(量刑は一次資料確認要)
名義貸しに応じた調査士だけでなく、業務を実施した非調査士も別途罰則の対象となり得る点を意識すること。
第3問:民法(相隣関係)― 境界標設置費用の負担
問: 隣接する甲土地(A所有・面積300㎡)と乙土地(B所有・面積100㎡)の境界が不明であるため、ABは共同で境界標を設置することとした。境界標の設置費用2万円と測量費用8万円の合計10万円は、AとBがどのような割合で負担するか。根拠条文を示して答えよ。
答:
| 費目 | 負担ルール | A負担 | B負担 |
|---|---|---|---|
| 境界標設置費用 2万円 | 等割り(民法224条本文) | 1万円 | 1万円 |
| 測量費用 8万円 | 面積比(300:100=3:1)(民法224条ただし書) | 6万円 | 2万円 |
| 合計 10万円 | 7万円 | 3万円 |
解説: 民法224条「境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。」
「設置費用は等割り・測量費用は面積比」という二分構造が頻出。土地家屋調査士の実務(境界確認業務・筆界特定)に直結する規定であり、筆界特定制度(不動産登記法131条以下)の費用負担とも対比して理解したい。
第4問:測量計算 ― 座標法(ガウスの公式)による地積計算
問: 以下の座標値を持つ4点で囲まれた土地の地積を座標法(ガウスの公式)を用いて求めよ(単位:m、㎡)。
| 点番 | X座標 | Y座標 |
|---|---|---|
| 1 | 0.00 | 0.00 |
| 2 | 15.00 | 0.00 |
| 3 | 12.00 | 8.00 |
| 4 | 3.00 | 10.00 |
答: 108.00㎡
解説: ガウスの公式:
$$2S = \left| \sum_{i=1}^{n}(X_i \cdot Y_{i+1} - X_{i+1} \cdot Y_i) \right|$$
各辺の計算:
| 辺 | $X_i \cdot Y_{i+1}$ | $X_{i+1} \cdot Y_i$ | 差 |
|---|---|---|---|
| 1→2 | 0×0 = 0 | 15×0 = 0 | 0 |
| 2→3 | 15×8 = 120 | 12×0 = 0 | 120 |
| 3→4 | 12×10 = 120 | 3×8 = 24 | 96 |
| 4→1 | 3×0 = 0 | 0×10 = 0 | 0 |
$$2S = |0 + 120 + 96 + 0| = 216 \quad \therefore S = 108.00\text{㎡}$$
地積測量図に記録する地積の単位・精度(小数点以下の桁数)については不動産登記規則の該当条文(一次資料での確認を推奨)に従うこと。計算過程での四捨五入のタイミングを誤ると最終値がズレる典型的な失点パターンに注意。
第5問:書式・作図 ― 地積測量図の必要記載事項
問: 地積測量図に記載しなければならない事項として定められているものはどれか。次の①〜⑤について、記載事項に該当するものと該当しないものを区別し、根拠条文を示せ。 ①方位 ②地目 ③縮尺 ④所有者の氏名 ⑤作成者の記名・押印
答:
| 項目 | 地積測量図の記載事項か | 根拠 |
|---|---|---|
| ①方位 | 該当する | 不動産登記規則77条1項2号 |
| ②地目 | 該当しない | 同条文に規定なし(表題部登記事項) |
| ③縮尺 | 該当する | 不動産登記規則77条1項3号 |
| ④所有者の氏名 | 該当しない | 同条文に規定なし |
| ⑤作成者の記名・押印 | 該当する | 不動産登記規則77条1項または関連準用規定(一次資料での確認を推奨) |
解説: 不動産登記規則77条1項の主な記載事項(号番号は一次資料で確認のこと):
- 1号:地番区域の名称
- 2号:方位
- 3号:縮尺
- 4号:地番(隣接地の地番を含む)
- 5号:地積及びその求積方法
- 6号:筆界点間の距離
- 以降:座標系の番号・筆界点座標値・境界標・測量年月日 等
「地目」「所有者氏名」は地積測量図の記載事項ではない。地積測量図はあくまで「面積・形状・境界」の確定のための図面であり、権利関係・地目は記載しない点を押さえること。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主要条文・根拠 |
|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示登記) | 不登法41条3号・6号 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 調査士法42条(一次資料確認推奨) |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 民法223条・224条 |
| 第4問 | 測量計算 | 座標法(ガウスの公式) |
| 第5問 | 書式・作図 | 不登規則77条1項2号・3号等 |