(司法書士試験ブレーンによる試案)

はじめに

本記事は、司法書士試験の中級以上の受験生を対象とした一問一答です。各問の解説は一般的な論点解説であり、個別の事情によっては判断が異なる場合があります。また、記載内容は執筆時点の法令・判例に基づくものです。一次資料(e-Gov法令検索・裁判所HP等)での最終確認を前提としてご活用ください。


第1問(民法:背信的悪意者)

問: AがBに甲土地を売却したが登記未了のまま、AがさらにCに甲土地を売却し、CがBより先に移転登記を備えた。その後CがBに対する関係で背信的悪意者と認定された場合、BはCに登記なくして所有権を主張できるか。

答: できる。

解説: 不動産物権変動の対抗要件は登記が原則(民法177条)。ただし最高裁昭和43年8月2日判決(民集22巻8号1571頁)は、背信的悪意者に対しては登記なくして対抗できると判示した。背信的悪意者とは単なる悪意を超え、登記の欠缺を主張することが信義則上許されない者をいう。Cがこれに該当する以上、Bは登記なくしてCに所有権を対抗できる。


第2問(不動産登記法:共同申請の原則と例外)

問: A・B共有の甲土地につき、A持分全部をCに売却する契約が成立した。Aが単独でA持分全部移転登記を申請することはできるか。

答: できない。

解説: 不動産登記の申請は登記権利者(C)と登記義務者(A)の共同申請が原則(不動産登記法60条)。単独申請が認められるのは、確定判決・相続・合併等、同法63条が定める例外的場合に限られる。本件は売買契約による移転であり例外事由に該当しないため、A・C共同申請が必要である。


第3問(商業登記法・会社法:取締役の任期)

問: 公開会社でない取締役会設置会社(監査役設置会社)において、定款の定めにより取締役の任期を選任後10年以内の事業年度に係る定時株主総会終結の時まで伸長することができるか。

答: できる。

解説: 公開会社の取締役任期は選任後2年以内が上限(会社法332条1項)。これに対し、公開会社でない会社では定款により10年以内まで伸長できる(同条2項)。「公開会社でない」とは、発行する全株式につき譲渡制限の定めを設けた会社をいう(同法2条5号の反対解釈)。本問の会社は取締役会設置会社であっても公開会社でないため、10年への伸長は適法である。


第4問(民事訴訟法:既判力)

問: AがBに対し貸金100万円の返還を求める訴えを提起し、請求認容判決が確定した。その後AがBに対し同一貸金を請求する訴えを再提起した場合、裁判所はどのように処理するか。

答: 後訴を却下する(既判力による遮断)。

解説: 確定判決の既判力は、同一事項についての後訴において当事者が確定判決に反する主張をすることを遮断し(民事訴訟法114条1項)、裁判所は既判力に抵触する後訴請求を却下しなければならない。口頭弁論終結時を基準時として、その前の事由に基づく同一請求の蒸し返しは許されない。なお二重起訴の禁止(142条)は訴訟係属中の問題であり、本件は判決確定後の問題であるから既判力の問題として処理される。


第5問(供託法:弁済供託・取戻権の消滅)

問: AがBに対する弁済供託(民法494条1項)を完了した後、BがAに対して受諾通知をした場合、AはBの承諾なく供託物を取り戻せるか。

答: 取り戻せない。

解説: 供託者は原則として供託物を取り戻すことができる(供託法8条1項)。しかし民法496条1項は、①債権者が供託を受諾したとき、または②供託有効の裁判が確定したとき、供託者の取戻権は消滅すると定める。BがAに受諾通知をした時点でAの取戻権は消滅する。取戻権消滅後にAが取り戻した場合、不当利得返還義務が生じる(民法703条)。


出題分野の振り分け

科目 論点
第1問 民法 物権変動・背信的悪意者
第2問 不動産登記法 共同申請の原則と例外
第3問 会社法・商業登記法 取締役の任期伸長
第4問 民事訴訟法 既判力による後訴遮断
第5問 供託法 弁済供託・取戻権の消滅