第1問:民法(遺留分)
問: 遺留分権利者が、遺留分を侵害する贈与の存在を知った場合、遺留分侵害額請求権の消滅時効(1年)は、相続の開始を知らなくても、贈与の存在を知った時点から進行を開始する。○か×か。
答: ×
解説: 民法1048条は、遺留分侵害額請求権の短期消滅時効の起算点を「遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」と規定する。①相続の開始を知ったこと、かつ②遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったこと、の両方を知った時点から1年が進行する構造である。一方の事実のみを知っても時効は進行しない。なお、主観的起算点を問わず、相続開始から10年で絶対的に消滅する(民法1048条後段)。「贈与を知れば即1年」という思い込みに乗じた誤肢に注意。
第2問:不動産登記法(仮登記の本登記)
問: 所有権移転仮登記に基づく本登記を申請する場合、当該仮登記の後に登記されたが、本登記申請時点ではすでに抹消されている抵当権の登記名義人も、「登記上の利害関係を有する第三者」(不動産登記法109条1項)に該当するため、本登記申請には当該者の承諾書が必要である。○か×か。
答: ×
解説: 不動産登記法109条1項は、所有権に関する仮登記の本登記申請に際し、「登記上の利害関係を有する第三者」の承諾を要求する。この「第三者」とは、本登記がされることにより同条2項に基づく職権抹消の対象となりうる登記を現に有する者に限られる。本登記申請時点で既に抹消済みの登記の名義人は、本登記により何ら不利益を受ける地位にないため、「登記上の利害関係を有する第三者」には該当せず、承諾書の添付は不要である。「仮登記後に設定されたこと」と「現在も登記が存続していること」を混同させる典型的な誤肢パターン。
第3問:商業登記法(現物出資と検査役調査)
問: 株式会社の設立に際し、発起人が現物出資をする場合、検査役の調査が不要となる要件として「現物出資財産の価額の総額が500万円を超えないこと」(会社法33条10項1号)が規定されているが、この「500万円」の判定は、各現物出資財産の個別の価額ではなく、すべての現物出資財産の価額の合計額で行う。○か×か。
答: ○
解説: 会社法33条10項1号は、変態設立事項(現物出資・財産引受け)に関する検査役選任申立ての免除要件として「現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えないとき」と規定する(「総額」という文言に着目)。個別財産が500万円以下であっても合計額が500万円を超えれば検査役調査が必要となる点で、「個々の財産ごとに判定する」と誤解した解答が頻出する。なお、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人による証明がある場合(同項3号)も検査役調査が免除される。不動産が対象の場合は、当該証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要となる(同項3号)。
第4問:民事訴訟法(既判力と相殺の抗弁)
問: 前訴の口頭弁論終結前から相殺適状にあった自働債権を、前訴被告が相殺の抗弁として主張しなかった場合、当該自働債権は前訴確定判決の既判力(遮断効)によって後訴で主張することができなくなる。○か×か。
答: ×
解説: 民事訴訟法114条2項は「相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する」と定める。文言上明らかなとおり、既判力が生じるのは前訴で現実に相殺の抗弁として主張し、判断を受けた場合に限られる。前訴で主張しなかった相殺の抗弁(自働債権)には遮断効は及ばず、後訴で改めて主張できる。「標準時前から存在した権利は遮断される」という既判力の一般原則を相殺に機械的に当てはめると誤る。民訴114条2項は相殺に関する特則であることを意識すること。
第5問:供託法(弁済供託の要件)
問: 金銭債務の弁済供託において、債権者があらかじめ受領を拒絶する意思を明示している場合であっても、供託の有効要件として、少なくとも口頭の提供(言語上の提供・民法493条ただし書)を行わなければならない。○か×か。
答: ×
解説: 弁済の提供は原則として現実の提供(民法492条)によるが、債権者があらかじめ受領を拒否する意思を表示したときは、口頭の提供(民法493条ただし書)で足りるとされる。さらに判例(一次資料での確認を推奨)は、債権者が受領を拒絶する意思を明確かつ確定的に表明しているときには、口頭の提供すら不要であり、直ちに供託することができると判示する。よって、受領拒絶が明白な場合には提供なしに供託が可能であり、本問は×。形式的に「提供→拒絶→供託」の順序を要求する条文構造から「常に提供が先」と考えるのが誤りの原因。
出題分野の振り分け
| 問 | 科目 | 論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法 | 遺留分侵害額請求権の消滅時効(起算点の構造) |
| 第2問 | 不動産登記法 | 仮登記の本登記における利害関係第三者の範囲 |
| 第3問 | 商業登記法(会社法) | 現物出資の検査役調査免除要件(500万円の総額判定) |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 既判力と相殺の抗弁(民訴114条2項の特則) |
| 第5問 | 供託法 | 弁済供託における提供の要否(受領拒絶明白の場合) |