第1問:民法(保証・主たる債務者の取消権)

問: 連帯保証人は、主たる債務者が詐欺を受けたことを原因とする取消権を行使して、主たる債務を消滅させることができる。

答: ×

解説: 民法457条3項は、「主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と規定する。 すなわち、保証人(連帯保証人を含む)に認められるのは履行拒絶権であり、主たる債務者の取消権そのものを保証人が代わって行使し、債務を消滅させる権限は与えられていない。 取消権は民法120条2項により行使できる者が限定されており(詐欺の場合、瑕疵ある意思表示をした者またはその代理人もしくは承継人のみ)、保証人はこれに含まれない。平成29年改正で明文化された457条3項の射程を正確に押さえること。


第2問:不動産登記法(事前通知の通知先)

問: 登記義務者が登記識別情報を提供できないため事前通知制度(不動産登記法23条1項)を利用する場合において、登記義務者が法人であるときは、当該法人の代表者個人の住所宛てに通知が発せられる。

答: ×

解説: 事前通知は、登記記録上の登記義務者の住所に宛てて発せられる。法人の場合は主たる事務所の所在地(登記記録上の本店所在地)が通知先となる(不動産登記規則70条1項参照)。代表者個人の住所ではない。 なお、登記後に本店移転等により登記記録上の所在地と現在の所在地が相違する場合でも、あくまで登記記録上の所在地に通知が送付される。本店移転後に移転登記未了の状態で事前通知制度を利用する場合は、旧所在地宛てに送付されることになる点に実務上の注意が必要である。


第3問:会社法(利益相反取引と特別利害関係人)

問: 取締役会設置会社において、代表取締役が自己のために当該会社と取引をしようとする場合(直接取引)、取締役会の承認を要するが(会社法356条1項2号・365条1項)、その承認決議において当該代表取締役も議決権を行使することができる。

答: ×

解説: 会社法369条2項は、「取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」と規定する。利益相反取引の当事者たる取締役は、当該承認決議において特別利害関係人に該当するため、議決権を行使できない。 さらに重要なのは、定足数の算定においても特別利害関係人たる取締役は除外される点である(「議決に加わることができる取締役の過半数が出席」という文脈から当然の帰結)。取締役が1名しかいない場合など、株主総会決議による承認が必要となる場面との混同にも注意。


第4問:民事訴訟法(相殺の抗弁と既判力)

問: AがBに対して提起した100万円の貸金返還請求訴訟において、BがAに対する50万円の売買代金債権を自働債権として相殺の抗弁を提出した。裁判所が当該抗弁を排斥し(BのAに対する売買代金債権は不存在と判断)、A全額勝訴の判決が確定した場合、当該確定判決の既判力は、当該売買代金債権の不存在についても50万円の限度で及ぶ。

答:

解説: 民事訴訟法114条2項は、「相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する」と規定する。「成立又は不成立」とある以上、相殺の抗弁が認容された場合のみならず、排斥(不成立)と判断された場合にも、相殺をもって対抗した額(本問では50万円)の限度で既判力が生じる。 したがって、BはAに対する別訴で同一の売買代金債権50万円を請求することは、確定判決の既判力によって遮断される。相殺の抗弁を提出するという行為には、認否を問わず既判力を発生させるリスクが伴う。訴訟戦略上、相殺の抗弁を提出すべきか別訴を選択すべきかの判断を誤らないよう注意が必要である。


第5問:供託法(弁済供託の取戻請求権)

問: 弁済供託をした供託者の取戻請求権は、被供託者が供託を受諾した後も、民法166条1項が定める消滅時効期間(権利を行使することができる時から10年または主観的起算点から5年)が経過するまでは行使することができる。

答: ×

解説: 民法496条1項は、「債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる」と規定する。この規定の反対解釈から、①被供託者が供託を受諾したとき、または②供託を有効とする確定判決があったときは、供託者の取戻請求権は消滅(実体法上の権利自体が消滅)する。 これは消滅時効による権利消滅ではなく、法定の事由による権利の絶対的消滅であるため、消滅時効期間が残存していても取戻請求は不可能となる。時効制度とは全く異なる仕組みであり、混同してはならない。なお、被供託者が供託金の還付請求書を提出して払渡しを受けた場合も、供託の「受諾」に当たると解されており(通説)、同様に取戻請求はできない。


出題分野の振り分け

科目 主要条文・根拠
第1問 民法(保証) 民法457条3項・120条2項
第2問 不動産登記法 不動産登記法23条1項、不動産登記規則70条1項
第3問 会社法・商業登記法 会社法356条1項2号・365条1項・369条2項
第4問 民事訴訟法 民事訴訟法114条2項
第5問 供託法 民法496条1項